今回はタイトルにあるように、麻酔に対する正しい恐れ方についてお話しします。
突然ですが、皆様は1年間で自動車事故に遭う確率はどれ程だと認識していますか。
考えたこともないかもしれませんが、答えは0.2〜0.5%程(2019〜2022年度)。これは毎年1000人に2〜5人は交通事故に遭っているということになります。(事故を起こした200人に1人が死亡事故)
この数字をみて高いと感じましたか。それとも低いと感じましたか。
因みに年末ジャンボの1等賞が当たる確率は0.000005%です(事故に遭う確率の10万分の1)。
私は交通事故にまさか遭うとは思ってませんが、年末ジャンボはもしかしたら当たる気がしていました^^;
実際の数値で把握するって大切ですね。
さて、これら交通事故のリスクを踏まえても車を使用しないという選択には殆どの方がなりません。
何故ならば、車を使うことで得られる恩恵が非常に多いからです。(メリット>デメリットの関係)
犬猫の手術でも同じように考えることができます。
麻酔をかけて手術することで得られる恩恵を踏まえ、どうするか飼い主と一緒に相談し、決断します。
では、犬猫が麻酔事故に遭遇する確率はどの程度でしょうか。
持病を持っている子も含めて0.05〜0.1%と言われています。(持病が無ければもっと低いです)
これをどう捉えるのかは、人それぞれですが実際の数字を把握することで正しく恐れるのが今回の目的です。
大前提として麻酔リスクは0%にはなりません。
理由は大きく2つ。
①稀に麻酔薬に過剰に反応を示す子がいるから
②リスクがあっても、麻酔をかけなければならない状況があるから
①について
我々人間も同様に、特定の薬に対してアレルギー症状がでる子がいます。全身麻酔では数種類の投薬を行い、かつその殆どが初めて身体に使う薬です。入れてみないと分からないと言うのが実状で、また規定用量での使用でも効きやすさなどの個体差がでる事があります。
②について
リスクがあっても、手術をしなければ深刻な状況を変えられない場合は飼い主の同意の下、手術を実施することがあります。リスクがある前提なので、当然麻酔リスクは0%で臨むことはできません。
生命が生きていくには
①酸素交換(酸素で身体を満たせているか)
②酸素循環(酸素で満たされた血液を運べているか)
これらが最低必須条件であり麻酔下では以下のものをモニタリングし、間接的に身体の状態を把握しています。
①酸素交換の把握
・酸素飽和度
・呼気二酸化炭素濃度
・肺内部の気圧
・呼吸数
・可視粘膜の色調把握
②酸素循環の把握
・血圧
・心電図(心臓からの電気信号)
・脈拍数
その他
・体温
・麻酔濃度
・痛みに対する反応
これらを正確に把握し、なるべくリスクを0に近づけるよう万全の状態で望んでいます。
当院では麻酔外科外来に力を入れています。
麻酔に関する不安に対しても助言できることがあるかと思いますので、お気軽にご相談ください。
Comments