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  • 執筆者の写真武相動物病院グループ

軟口蓋過長症について

更新日:2023年8月15日

病態:


軟口蓋(なんこうがい)とは、咽喉頭部にある咽頭鼻部と咽頭口部を隔てる軟部組織のことを指します。

ざっくりと喉の奥の方の鼻と口を分けている部分という認識で大丈夫です。軟口蓋は、採食時に飲み込まれる食物が気管に入ってしまうのを防ぐための喉頭蓋とわずかに接する程度が正常な長さですが、軟口蓋過長では軟口蓋が長くなっているため、吸気時に気管への空気の通り道を塞いでしまうことで呼吸障害が起こります



好発犬種:軟口蓋過長症は

チワワ、ポメラニアン、パグ、ブルドッグやフレンチブルドッグなどの短頭種でよくみられる疾患です。



症状:

軟口蓋が呼吸路を塞ぐことで、いびき様の呼吸音や吸気時の喘鳴音が臨床症状としてみられ、開口呼吸を呈します。重度になると、呼吸困難、チアノーゼ、高体温、肺水腫を起こすこともあり、緊急の処置が必要になることがあります。



診断:

診断には、上述の呼吸音や臨床症状のほか、胸頸部のX線検査により軟口蓋の長さや気管虚脱や肺水腫の有無を確認するほか、必要に応じ鎮静下で内視鏡または目視下で直接咽喉頭部を確認することで診断します。短頭種では、短頭種気道症候群といわれる、軟口蓋過長以外の形態的異常(外鼻孔狭窄、扁桃腫大、喉頭小嚢反転、声門狭窄、喉頭・気管虚脱)が併発していることがほとんどであるため、それらの異常の有無についても確認が必要です。



治療:

①軽症の場合、ダイエット、首輪から動輪への変更、運動制限、高温の環境を避けるなどの生活改善のほか、必要に応じ咽喉頭部の炎症を抑えるための消炎薬の投与を行います。軟口蓋の過長が重度の場合や、軽度であっても、過度の興奮や高温環境によって呼吸が荒くなると、軟口蓋が炎症・浮腫を起こし重症化する場合があります。


②重度の場合、上記の呼吸困難や高体温、チアノーゼを起こし危険な状態になることがあります。その場合、緊急の処置として100%の酸素の吸入、咽喉頭部の炎症や浮腫を抑えるためのステロイド等の抗炎症薬の投与、保冷剤を頸部や鼠径部に当てるなどの体温冷却のほか、必要なら興奮を抑制するための鎮静薬の投与を行います。しかし、根本的な解決のためには軟口蓋の外科的な切除が必要になります。


実際の手術:

軟口蓋を手前に引き出しているところです。

麻酔下で気道を塞ぐような所見も確認できたので部分切除を実施しました。


気道部分まではっきり確認できるように なりました。

切除部位は吸収糸で縫合しており抜糸は不要です。



現在症状がなくとも、年齢とともに伸びていく子もいます。

避妊去勢などの麻酔のタイミングに合わせて行うこともできますので、お気軽にご相談下さい。



獣医師 岩屋大志郎

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